研究概要 |
固気流動層による連続分離のためには浮沈物を流動層外に取り出す必要がある。これまで我々はバケットエレベーターなどの駆動部を有する取り出し機構を層内に備えることにより比較的高速処理速度を実現してきた。しかし,分離対象物の1つである家電・自動車のシュレッダーダスト(廃棄物)は国内だけでも年間100万トンにも達しており,さらなる処理速度の向上が求められている。これを実現するためには分離後の物体を層外に素早く取り出し,分離に有効なスポットを効率良く使うことが不可欠であるが,従来のように流動層内に駆動部を持つ機構にすると流動層の見掛け粘性による抵抗もあり,その駆動速度には限界がある。そこで,我々は取り出し機構をほとんど持たず排水処理などで連続大量処理に用いられる固液分離技術のシックナーに注目した。シックナーは上部から固体と液体の混合溶液が投入され,固体は沈降により徐々に濃縮され,底部からポンプによって排出される。一方,固体が取り除かれた液体は上端の周囲から溢れることにより排出される。したがって,シックナーは内部に取り出し機構が無く,連続運転が可能な装置であると言える。そこで本研究ではシックナーをモデルとして乾式分離装置を新規に設計および作製し,比重調節物体を用いて本装置内での物体の浮沈特性,分離性能を調べた。その結果,本装置では比重差0.4以上の物体に対し,約80-90%の分離精度において6.8-7.8ton/(m2・h)の処理速度を達成できることが明らかとなった。この処理速度は分離対象物の体積基準換算では従来装置の約7-8倍大きく,本新規機構がさらなる処理速度増加の実現に有効であることが示唆された。
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