研究概要 |
ビーズミル分散装置により分散したシリカナノ粒子は,粒子径が小さくなるにつれて,そのゼータ電位の絶対値は高まることがAFMを利用した研究により明らかになっている。平成22年度は,この特性とElectrical Field Flow Fractionationの原理を利用した電気泳動型ナノ粒子分級装置の開発を行った。これまで流れ方向に対して垂直・鉛直方向に電圧を印加した装置を試作したが,シリカ粒子と水との密度差と重力が流れに影響し,層流場の形成を妨げていた。このため分級精度の低下を引き起こしていた。そこで今回は,厚さ20mm,幅50mm,全長850mmの装置を試作し,流れ場に対して直交し水平方向へ粒子が電気泳動するように電極を設置した。入り口部を三分割し,その中央から粒子懸濁液を,両端から水を流し,粒子が電極に直接接触することを回避した。その結果,密度差と重力に起因する粒子懸濁液の流れの乱れが低減され,わずか5Vの電圧を印可するだけで50~300nmのシリカ粒子の分級に成功した。さらに分級精度の向上を図るためにCFDシミュレーションにより装置内部の流動解析を行ったところ,粒子懸濁液と水の各入り口部における流量を調節し,粒子に流れ速度勾配に起因する揚力を与えることにより粒子懸濁液の拡散を抑制し,粒子を直進させることが可能であることが分かった。このことを利用することにより,5~10Vの電圧を印加し50~200nmのシリカ粒子の高精度分級に成功した。本装置はシリカナノ粒子の分級に適用したが,水との密度差の小さい高分子粒子の分級にも効果的であると考えられる。
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