研究概要 |
水蒸気吸着式ヒートポンプ(WAHP)に適用できる炭素系吸着剤の開発を目的として研究を行った。一般的に炭素材料の細孔表面は疎水性であるため、WAHPの運転範囲における低相対圧部における水蒸気吸着量が小さく、中高相対圧部において吸着量が急激に増加することが知られている。WAHPの性能は運転範囲における水蒸気吸着量差に依存し、吸着量差が大きければ大きいほどその性能は高くなる。まず、レゾルシノールーホルムアルデヒド(RF)樹脂を炭化物原料として細孔構造を制御したメソポーラスRFカーボンクライオゲル(RFCC)を調製し、それらの細孔特性、水蒸気吸着特性などを評価した。調製したRFCCの水蒸気吸着等温線は一般的炭素材料の水蒸気吸着と同様に、中相対圧部で大きな吸着を示し、さらに高相対圧部で大きな吸着を示すことが分かった。そこで、疎水表面であるRFCC細孔内に水との親和性の高い塩化力ルシウムなどの無機塩を含浸することにより表面を親水化し中高相対圧部で見られた水蒸気吸着等温線の立ち上がりをWAHPの運転範囲である低相対圧部ヘシフトさせることを試みた。RFCCのメソ細孔内へ無機塩(LiCl_2, MgCl_2, CaCl_2, ZnCl_2)を5 wt%含浸させ水蒸気吸着測定したところ、どの塩を含浸した場合においても低相対圧部での吸着量はRFCCのそれより増加した。また、CaCl_2を0.1~40 wt%含浸させた場合、含浸量増加に伴い低相対圧部における吸着量が増加した。これらのことから無機塩含浸が低相対圧部での水蒸気吸着に有効であることが確認でき、WAHPへの調製した試料の適用の可能性が示唆された。 今後、異なる細孔径分布を有するRFCCを調製し、それらへ無機塩を含浸し、無機塩を含浸するRFCCの細孔径分布が水蒸気吸着挙動にどのような影響を及ぼすのかなどを検討する予定である。
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