本研究では微細繊維構造を有し高比表面積のセルロースナノファイバー(CNF)に各種官能基を導入した誘導体を調製し、調製した材料によるタンパク質等の生体高分子や金属ナノ粒子などの吸着保持特性を評価する。本年度は、以下の3つの小課題を中心に研究を進めた。 1. IMAC (Immobilized Metal Affinity Chromatography)によるタンパク質の分離濃縮 本小課題では、CNFの一種としてバクテリアセルロースにイミノ二酢酸(IDA)をキレート基として導入し、Cu(II)、Ni(II)、Co(II)、Zn(II)を固定化して金属アフィニティーに基づいた生体物質の吸着挙動を評価した。Cu(II)を固定化したIDAバクテリアセルロースとIDA植物由来セルロースにおけるタンパク質の吸着挙動を比較した結果、同程度のCu(II)固定化量に対して、IDAバクテリアセルロースが2倍以上のタンパク質飽和吸着量を有することが示された。本研究成果は次年度学術論文として公開予定である。 2. 4級アンモニウム化CNFによるタンパク質の吸着 4級アンモニウム基を導入したCNF誘導体を調製し、タンパク質の吸着特性を評価した。植物セルロースから調製したセルロース吸着剤と比較して、4級アンモニウム化CNFはタンパク質に対する高い吸着容量を示した。ただし官能基導入率が低かったため、次年度は化学修飾法を変えて検討を進める。本研究成果は次年度学術論文として公開予定である。 3. Fe(III)担持CNFによるリン酸化タンパク質およびDNAの吸着 イミノ二酢酸を導入したCNF誘導体に、Fe(III)を吸着固定した。調製した吸着剤はDNAに対する大きな吸着容量を示した。
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