半導体産業や液晶製造現場において、フォトレジスト現像液として利用されている水酸化テトラメチルアンモニウムは、環境省工業排水基準により規制されているアンモニウム化合物であり、工業廃水処理の大きな課題の一つである。本研究では、吸着法を用い、水酸化テトラアメチルアンモニウムの低コストかつ省スペースな分離・回収プロセスについて、エンド・オブ・パイプ廃水処理が可能なシステムを確立することを目的としている。平成22年度は、平成21年度に最適化した臭化セチルトリメチルアンモニウムを構造規定剤として用いることで調製したMCM-41吸着剤をカラム法へ適用した。MCM-41は粉末状で得られることから、カラム操作時の圧力損失を抑制するため、アルミナ系のバインダーを用いて造粒した。造粒したMCM-41はカラム法において適用可能であった。pHが10の場合、Bed Volumeが3500程度まで、pHが9の場合Bed Volumeが3000程度まで、全量の水酸化テトラメチルアンモニウムを吸着可能であることが示された。この図のプロットを積分し、吸着剤中のMCM-41への総吸着量を算出すると、pH=9の総吸着量は0.411 mmol/gで、pH=10の総吸着量は0.474mmol/gであった。このことから、水酸化テトラメチルアンモニウム含有工業廃水のpHに近いpH=10の方がTMAHを15%程度多く吸着することが明らかとなった。また、破過後のカラムは1 mol/Lの塩酸水溶液により、ほぼ定量的に溶離が達成され、また同時に水酸化テトラメチルアンモニウムの濃縮も可能であることが示された。従って、本研究で得られたMCM-41吸着剤はフォトレジスト廃液への適用が可能であり、今後の廃水処理に効果的であることが期待できる。
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