研究概要 |
分子シミュレーションにより、スリット状ナノ細孔内で、2種類の異なる種類のLennard-Jones液体A,Bを『毛管相分離』状態で平衡状態になるようシミュレートした。その際、液体A,液体Bに相当する、粒子数の割合を変えることで、バルク領域の液体A,Bの濃度条件が異なる状態について、シミュレートした。バルクにおける低濃度成分の濃度が低い条件では、毛管相分離の2液体のメニスカス界面が著しく歪み、界面の曲率半径が小さくなった。これに対して、濃度が高い条件では、メニスカス界面は細孔入口付近で僅かに歪むだけで、界面の曲率半径は大きくなることが明らかになった。メニスカス界面の曲率半径が小さいほどLaplace効果が強く働き、界面を挟んだ2つの相の間に、大きな圧力差を生じさせる。従って、毛管相分離した凝縮相ではメニスカス界面の曲率半径が小さいほど内圧が低くなる。これら異なるメニスカス凝縮相を半分に切りとり、これを上下に仕切板を挟んで接続したシミュレーションを設計した。そして、仕切板を外した後のメニスカス凝縮相の移動挙動をシミュレートした。この結果、毛管相分離現象に伴う、メニスカス界面内部の凝縮液で増幅された圧力勾配と、ナノ細孔内の凝縮相の物質移動速度は、正の相関関係があることが判明した。このことから、ナノ細孔内での凝縮液の移動現象には、毛管相分離現象が寄与していることが明らかになった。また、副次的に、参照系として、バルクにおける液体A, B界面のTolman length(分割面と張力面の位置的ずれ長さ)を検討した結果、温度が高いほど、また、液体A, B間の相互作用強度が強いほど長くなるなどの、バルク物性が判明した。
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