研究概要 |
液体への超音波照射によって、常温・常圧の液体中で、フラーレン・カーボンナノチューブを合成するプロセスの開発を目指し、本年度は以下の項目について研究した。 1. 既報告のカーボンナノチューブの超音波合成実験の追試 高出力の超音波ホモジナイザーおよび低出力の超音波洗浄器により、カーボンナノチューブが合成されたと報告のある条件で追試を行った。両装置とも、常温・常圧の有機溶媒からグラファイト・ナノ粒子が生成されたが、カーボンナノチューブを確認することはできなかった。一方で、超音波ホモジナイザーは照射後数分でグラファイト粒子が析出するが、超音波洗浄器では数時間かかり、装置・出力により生成時間に大きな違いがあることがわかった。 2. 溶存ガス種を変えたときの収率・形態の変化の検討 上記1の実験において、溶存ガス種をアルゴン、空気と変化させて検討した。超音波化学において溶存ガスの依存性は非常に大きいことが知られているが、生成物の形態に大きな変化は無かった。しかし、収率に関しては、空気よりもアルゴンの方が高いことがわかった。 3. 音場中のキャビテーション気泡の挙動観察 キャビテーション気泡のダイナミクスをストロボ観察し、音場の位置に依存してその挙動が大きく異なることがわかった。また、ソノルミネッセンス観察と対応させることにより、高温の気泡は定在波の音圧の腹の位置に向かって移動し、低温の気泡は、そこで合体した気泡が音圧の節に向かう位置で吐き出した小さな気泡の連なりであると推測された。 4. ソノルミネッセンス測定による気泡内到達温度および圧力の見積り ソノルミネッセンスをスペクトル解析することにより、硫酸中の高輝度の青白いソノルミネッセンスの温度は約8,000℃であり、一方で、ナトリウム塩を溶かしたときに見られる橙色のナトリウム原子発光気泡は約2,000℃、100気圧であることが見積もられた。
|