研究概要 |
これまで2相流についてはサイズのそろったスラグ流を安定して生成させることに着目して検討してきたが,実生産への適用を考えると,より高流量で,操作範囲の広さ・柔軟性が重要になってくる.そこで本申請の研究では,これまで用いてきたスラグ流の長所を活かしつつ,安定スラグ流形成領域より高流量域(ただし微小液滴にはならない程度)での混相流に移行していくことを目的としている. 本年度は,高流量域での液液二相流での流れの状態を調べるとともに,スラグ流下でより高速に相間物質移動を可能とする操作を検討した.流体としては水-ドデカン系でフェノールのドデカン(油)相から水相への物質移動を扱った. 操作の工夫として,出口流路の途中で流路サイズを拡大して抽出実験を実施した.1/16"ユニオンティーの出口に内径1.00mm,長さL_1のPTFEチューブを接続し,さらにその先に内径1.59mm,長さL_2のPTFEチューブを接続した.wf=0.5, V_t=20mL・min^<-1>とし,滞留時間がτ=0.83sで一定となるようL_1とL_2と変化させて拡大部の位置を変えた. 出口流路の途中で流路サイズを拡大したときの拡大部の位置と抽出率(抽出率はドデカン相に供給したフェノールのうち水相に移動した割合)の関係から,L_1=0.2mのとき抽出率は最大になっており,流路サイズ拡大部を設けることで,物質移動性能をより向上できることがわかった.この傾向が得られる理由として,通常はスラグ側面に液膜は存在しないが,流路拡大する瞬間にこの両側面に油相が回り込み接触面積が増大することが考えられる. 本年度実施した操作の工夫によって,スラグ形成直後に限られていた物質移動の促進効果を得られる場を増やすことができるため,スラグ流の特徴をより効果的に引き出せるようになるといえる。
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