研究概要 |
本申請研究では、複核活性点の相乗的・協奏的分子活性化能に着目し、触媒活性点上で酸化剤や基質の活性化を行い有害な副産物を生成しない有機合成プロセスの開発を目的とする。本年度は、過酸化水素を酸化剤とした新規バナジウム二置換ホスホタングステート[γ-H_2PV_2W_<10>O_<40>]^<3->(I)によるアルカンの効率的、立体特異的、位置選択的ヒドロキシル化反応を行った。触媒Iによる過酸化水素を酸化剤とした種々のシクロアルカンの酸化反応について検討した。シクロアルカンの酸化反応は選択的に進行し、ケトンやカルボン酸の副生、C-C結合の切断をほとんど起こすことなく対応するアルコールが高選択的(≧98%)に得られた。直鎖のn-ヘキサンも対応するアルコールへと選択的(≧96%)に酸化された。2級と3級C-H結合を有するシクロアルカンの酸化反応における位置選択性について検討した。本反応系においては不活性な2級C-H結合が選択的にヒドロキシル化され、全アルコール中の2級アルコールの割合は78-99%となった。2つの隣接する3級C-H結合を有するtrans-1,2-ジメチルシクロヘキサンとtrans-デカリンの酸化反応において、trans-3,4-ジメチルシクロヘキサノールとtrans-2-デカリノールの選択率はそれぞれ86%と93%となった。活性な3級C-H結合の存在下においても、このような一つの2級アルコールのみへの高い位置選択性を示した例はこれまでに報告されていない。メチルシクロヘキサンなどの一置換シクロヘキサンも選択的(≧81%)に対応する2級アルコールへとヒドロキシル化された。
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