ゼオライト層状前駆化合物の層間への有機金属化合物の導入による新規構造ゼオライトの合成とその機能化を本研究計画において目指すが、平成22年度は、前年度に引き続き、ゼオライトの層間距離の自在制御および新規構造ゼオライトの機能化を研究目的とした。FER型ゼオライトにおいて、層状前駆化合物の層間に導入するシラン化合物の分子数、導入条件を調整することで、ゼオライトの細孔径(層間距離)を原子レベルで精密に制御できることを見出した。この手法を用いることで、細孔内を通過できる分子の大きさ、形状の差をより原子レベルで認識できる分子篩能のゼオライトへの付与が可能になると期待される。また、層間に導入できる化合物の種類の幅を広げることにも成功しており、導入分子が持つ官能基の大きさ(炭化水素鎖の長さ)を変えることで、細孔径の大きさを原子レベルで変えることができ、さらに、親疎水性も変えることができる。これにより、分子の形状のみならず、分子の極性のような化学的な性質に基づく分子篩として機能させられることが期待される。 また、MWW型層状前駆体を対象として、ゼオライト骨格内への各種金属元素の導入を検討し、Sn、Zrを導入することに成功し、これらの層間拡張にも成功し、これまでのヘテロ金属元素が持つ触媒機能とは異なる酸触媒または酸化触媒能を付与することができた。層間にのみ金属元素を選択的に導入する検討し、これまでにSn、Feを導入した層間拡張を達成し、他種金属元素の導入も可能になると思われる。骨格中の金属元素とは異なる金属元素を導入できることで、層間への特異的な反応場の構築だけでなく、ゼオライト骨格で反応した分子がさらに層間で連続的に異なる反応を起こせるような、二元機能を持つゼオライト触媒の合成へと応用できると考えられる。
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