申請者はこれまでに固体酸の表面に有機塩基を導入した多機能触媒の開発を行ってきた。この研究をベースに新たな触媒反応の開発を目指すため、平成21年度は触媒の表面酸点・塩基点の性質の変化と触媒作用への影響を調べた。この研究によって、多機能触媒に用いる固体酸担体の性質を変化させることで、触媒作用が変化することを見出した。 例えば、担体のシリカアルミナを塩基点を導入する前に焼成することで、担体表面の酸点と、導入する塩基点の位置関係が制御できることを見出した。この現象を利用することで、マイケル反応に更なる高活性・高選択性を有する多機能触媒の開発に成功した。加えて、シリカアルミナの代わりにモンモリロナイトを担体に用いると、酸・塩基の連続反応が進行することを見出した。この触媒はone-pot反応への応用が可能であった。 平成21年度の研究では、酸点を有する担体だけでなく、塩基点の性質による触媒作用の変化も明らかにした。固体酸表面へ導入する塩基点をアミンから4級アンモニウム塩へ代えることで、エポキシドからのカーボネート合成に最適な触媒を調製できた。 今後は、これらの酸点・塩基点の触媒作用に関する知見を元に、更なる高機能触媒と、それを用いる新反応の開発を行う。固体表面の酸点を利用する求核付加反応や、4級アンモニウム塩触媒の更なる高機能化のための金属カチオン導入等の研究を現在検討中である。上記の研究成果を元に、平成21年度は原著論文7報、学会発表8件を行なった。
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