平成21年度の研究で得られた知見を活かして、平成22年度は主に固体酸表面での活性種の形成と、それを用いる触媒反応の開発を行った。具体的にはモンモリロナイトやシリカアルミナの表面酸点とアリルシランが反応することで固体酸表面にシリル種が形成されることを見出し、これがアリル化反応に高い触媒活性を示すことを明らかにした。 モンモリロナイトとアリルシランの反応によって形成されるカチオン性シリル種は、アルケンのアリルシリル化反応に高い活性を示した。例えば、p-クロロスチレンとアリルトリメチルシランの反応では、目的のアリルシリル化生成物が収率95%で得られた。ジシリルアルコール等を用いる実験から、反応の活性種であるシリルカチオンは、ジシリル型であることがわかった。 一方、アセタールのアリルシリル化反応には、固体酸の中でもシリカアルミナが高い触媒活性・選択性を示した。この反応は量論試剤を用いるもののみが報告されており、触媒反応が始めて達成された。表面にSiMe_3^+カチオンをもつシリカアルミナを調製し、これを用いてSiEt_3基をもつアリルシランによる反応を行ったところ、SiMe_3基をもつアリルシリル化生成物が得られた。この結果は、シリカアルミナ表面のモノシリルカチオン(SiMe_3)が反応に関与していることを示している。固体酸の種類によって活性なシリル種の構造が異なり、また、最適な触媒反応の種類も異なることがわかった。 上記の研究成果の原著論文による報告および学会で発表を行った。
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