ゼオライトやメソ多孔性シリカの細孔骨格内や表面に希薄に固定化した遷移金属酸化物種は、バルクの酸化物種とはサイズ・配位構造・光励起状態が全く異なり、各種光触媒反応において特異な反応性・選択性を示す。本研究では、ドライプロセスの一つである化学蒸着(CVD)法を用い、金属塩化物・有機金属錯体・金属アルコキシド等をビルディングブロックとしたボトムアップ型アプローチにより、各種固体表面上に原子・分子レベルでの異種金属酸化物種の積層による光触媒活性点の構築を目指した。本年度は、触媒担体として用いるメソ多孔性シリカ(MCM-41)の昇温排気などの前処理条件、CVD処理による積層型の触媒活性点構築時のガス圧・温度・水和処理時間などの各種パラメーターの詳細な検討を行った。窒素吸脱着測定、X線解析(XRD、XAFS)、ホトルミネッセンス、UV吸収測定より、CVD処理後もMCM-41の細孔構造が保持されていること、固定化した金属酸化物種が四配位構造を有していることを確認した。予め前処理したMCM-41上に四塩化チタンと塩化クロミルを順次導入し調製したCrTiMCM-41、および個々に導入し調製したTiMCM-41、CrMCM-41を用いエチレンの光重合反応を検討したところ、CrTiMCM-41ではCrMCM-41に比べ反応の誘導期が短縮し、かつ反応速度が著しく向上することを見いだした。一方、TiMCM-41では紫外・可視いずれの光を照射しても反応は全く進行せず、積層によるCr-Tiの相互作用がCr種の電子状態に摂動を与え、その反応性を向上させることが示唆された。来年度においては、可視光照射下クリーンな酸素分子を用いた酸化反応系へ展開を図ると同時に、より詳細なキャラクタリゼーションを進めその構造と触媒機能との相関について検討を行う。
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