平成21年度の研究計画により、可視光応答型光触媒として期待される酸化タングステンに窒素ドーピングを行うことで可視光吸収の長波長応答化を検討した。窒素源としてNH_4^+イオンを含有するタングステン酸アンモニウム(5(NH_4)_2O・12WO_3・5H_2O)を空気中で焼成することで、500~600nm付近の可視光領域にまで吸収領域が拡張したNドープ型の酸化タングステン光触媒を調製することに成功した。酸化タングステンに対する窒素ドープ量の最適化は、焼成温度を変化させることで行い、助触媒として約1wt%のPt微粒子を光析出法により担持した。200℃以下で調製した試料はアモルファス状態であり光触媒活性を示さなかった。これに対して、400℃以上で調製したNドープ型WO_3は単斜晶構造を有し、通常のNを含有しないWO_3の吸収端である450nmよりも長波長側の可視光照射下においても、気相中メタノールの酸化分解反応に対して光触媒活性を示した。特に、600℃で調製したNドープ型WO_3光触媒が最も高い可視光活性を示し、太陽光追尾型の集光装置を用いて同上のメタノール酸化分解反応を検討したところ、数時間の太陽光照射で約1600ppmのメタノールを完全にCO_2とH_2Oにまで酸化分解できることを見いだした。しかしながら、今年度、調製に成功したNドープ型の酸化タングステンのBET表面積は10m^2/g以下ときわめて低く、気相中VOCsの吸着除去には不利であった。そこで、次年度の研究計画通りに、高表面積かつ表面疎水性を有するゼオライト吸着剤との複合化を行い、さらなる光触媒活性の向上と気相中に希薄に拡散したVOCs(アセトアルデヒド、酢酸、エタノール)の迅速除去についても検討する。
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