本研究では、小胞等のナノ構造体を自発的に形成促進可能なタンパク質である構造タンパク質を用いてターゲットタンパク質を小胞に集積化した「ナノ小胞」を創製する技術を開発する。今年度は、磁性細菌内で合成される磁性粒子膜タンパク質、Mms13の小胞形成能の評価とターゲットタンパク質としてGFPを用いた小胞集積化の検討を行った。 Mms13遺伝子の下流にGFP遺伝子を融合し、磁性細菌内で複製可能なベクターに組み込んだ。このベクターを用いて磁性細菌を形質転換し、磁性細菌内での融合タンパク質の発現を試みた結果、磁性粒子膜へのGFPの集積化が確認できた。さらに磁性粒子を合成しない条件(好気培養)により磁性細菌の形質転換体を培養し、細胞内を観察した結果、マグネタイトの形成はみられず、一方でナノサイズの小胞様物質が観察され、それらはGFP蛍光を保持していることが示された。そこで、Mms13-GFP融合遺伝子を動物細胞内で発現可能なベクターに組換え、CHO細胞に導入し、細胞内を観察した。その結果、コントロールであるGFPのみの発現においては、細胞全体に蛍光が観察されるのに対し、Mms13-GFP融合タンパク質を発現させた際には、培養の過程で複数の小胞様物質の形成が促進されていることが示された。本結果よりMms13を小胞様のナノ構造体を形成可能な構造タンパク質としての有効性が示され、GFPをターゲットタンパク質として小胞内への集積化に成功した。
|