本年度は、前年度同定したピキア酵母由来の六炭糖・五炭糖輸送体遺伝子のバイオエタノール生産における応用の可能性についての検討を行った。具体的には、まず主要六炭糖・五炭糖輸送体であるSUT1・SUT2・SUT3・HGT2について、サッカロミセス酵母変異株KY73XYL株(親株であるKY73は六炭糖・五炭糖輸送体が全て欠損しており、それにキシロース代謝遺伝子群を染色体組み込みで導入したもの、つまりキシロースの潜在的代謝能はあるが輸送能はない)で個別に発現させ、キシロース発酵を行った。その結果、有意な発酵が認められたのはSUT1とHGT2のみであり、HGT2ではキシリトール蓄積が大幅に抑制されるという興味深いものだった。これは、糖の細胞内輸送と細胞内代謝が一部リンクすることを示す。両遺伝子を共発現させた場合は、それほど加算的効果は見られなかった。次に、同定した輸送体を実用酵母IR-2株へ導入することを試みた。本株はアミノ酸選択マーカーが使えないことから、抗生物質ジェネティシンを選択マーカーに、URA3遺伝子への染色体組み込みによってSUT1、HGT2及びSUT1とHGT2の両方を導入することに成功した。来年度以降にキシロース発酵能に及ぼす影響を解析する予定である。前年度国内出願した特許について、将来的な重要性を鑑み海外出願も行ったことも付記する。
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