研究課題
前年度に引き続き本年度は酵素を用いたタンパク質の安定化技術について検討を行った。モデルタンパク質として抗EGFR抗体を用いた。酵素を用いて環状化したこのタンパク質の熱安定性をCDスペクトルを用いて評価した。この評価より、抗EGFR抗体の熱安定性をわずかながら向上させることに成功した。抗原結合能についても同様に評価したところ、結合能についてはほとんど差が見られなかった。環状化に伴う機能向上は達成できなかったが、機能を失うこと無く環状化できた点は特筆すべきである。本技術の汎用性を示すべく、多量体タンパク質であるストレプトアビジン、及びセルラーゼであるβグルコシダーゼを用いて環状化タンパク質を調製した。同様にN末端及びC末端に酵素の基質配列となるタグ配列を導入した発現ベクターを構築し、大腸菌発現系を用いて発現、精製を行った。ストレプトアビジンにおいては、コールドショック発現系を用いることで可溶性画分への発現に成功した。これらのタンパク質はいずれもそれぞれの機能であるビオチン結合能、及び酵素活性を有していることが確認された。続いてこれらのタンパク質をタンパク質連結酵素を用いて連結した。反応はタンパク質と酵素を混合するだけであり、非常にシンプルである。連結されたかどうかをSDS-PAGEにより確認したところ、ストレプトアビジンにおいては酵素を添加したときにのみ低分子量のバンドが確認された。タグを付加しないタンパク質、及び酵素が存在しないときではバンドの移動は見られなかった。しかし、βグルコシダーゼにおいては環状化反応は見られなかった。そこでタグ配列の間にリンカーを挿入したタンパク質を調製し、再度環状化反応を行った。これより、βグルコシダーゼにおいてもわずかに環状化反応を進めることに成功し、リンカー配列の重要性を明らかにした。これらのタンパク質の安定性評価について、現在CDスペクトル及び酵素活性を指標として引き続き評価を行っていく。
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Journal of Biotechnology
巻: 152 ページ: 37-42
Bioconjugate Chemistry
巻: 21 ページ: 2227-2233