キシロース代謝経路としてキシリトールを代謝中間体として生産しないキシロースイソメラーゼ経路の酵母への導入手法の確立および、これを用いたキシロースからのエタノール発酵能の評価を実施した。Orpinomycessp.由来キシロースイソメラーゼ発現遺伝子カセットをδインテグレーション法により酵母Saccharomyces cerevisiaeゲノム上に多コピー導入することで、キシロースイソメラーゼ活性を有する酵母株の作成に成功した。また、この酵母株を用いキシロースを単一炭素源としたエタノール発酵が可能であった。現在までにキシロースイソメラーゼ発現遺伝子カセットを酵母ゲノム上へ組込み、酵母にキシロースイソメラーゼ経路によるキシロース代謝能を付与した例は報告されていない。ゲノム上への目的遺伝子組み込みは遺伝子組換えの安定性が高く産業利用に適した手法であり、本研究成果は競争が激化している当該分野において非常に重要性の高いものである。また、副生産物であるキシリトール生産を抑制するため、キシリトール生産反応に関与していると考えられる非特異的アルドースレダクターゼをコードするGRE3を欠損させた酵母株を作成し、キシロースイソメラーゼ経路によるキシロース代謝経路を導入した。その結果、キシロースからのエタノール発酵において副産物であるキシリトールの生産量が減少し、エタノール生産量の向上が見られた。さらにキシロース消費速度並びにエタノール生産性の2倍以上の向上が確認された。発酵培地中にキシリトールを添加した発酵実験結果から、キシロースイソメラーゼ経路によるキシロースからのエタノール発酵ではキシリトールが阻害剤として働き、キシリトールの複製産を抑制することが発酵効率の向上において非常に重要であることを明らかとした。
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