研究概要 |
本研究課題は,抗体医薬開発の基盤となる技術の開発のために新規なモノクローナル抗体作製システムの構築を目指し,ニワトリハイブリドーマ作製系の構築を目的とした。初年度には,細胞融合に必要な細胞融合株を遺伝子工学的手法を用いてニワトリB細胞株DT40を改変することにより樹立した。樹立した細胞株では,ヒポキサンチン,アミノプテリン,チミジンを含むHAT培地中で速やかに細胞死が誘導された事より,細胞融合株としての利用できる可能性を持つ。そこで,本年度では,初年度に樹立した細胞融合株を用い,実際にニワトリリンパ球との細胞融合を行った。まず,TNP-KLHをニワトリに反復免疫し,血清中の抗TNP IgG抗体価の上昇をELISA法により確認した後,脾臓を摘出し脾臓B細胞を調整した。その後,脾臓B細胞と新規に樹立したDT40由来細胞融合株との細胞融合をポリエチレングリコール法と電気融合法を用いて行った。その際,細胞融合効率を最適化するため,ニワトリの免疫条件や融合方法の最適化について検討した。細胞融合後,ハイブリドーマのみを選択するため,HAT培地中で培養した結果,ポリエチレングリコール4000を用いる条件においてHAT耐性のコロニー形成が確認できた。更に,取得したコロニーのフローサイトメーターによる解析の結果,取得したクローンの中にはDNA量の増加しているクローンが存在した。これは,ニワトリ由来の細胞と樹立した細胞融合株が細胞融合した事によりHAT培地に対し耐性を獲得した事を意味する。以上の結果は,HAT培地中で選択可能な細胞融合株の樹立及びハイブリドーマの取得に成功した事を示す。
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