| 研究概要 |
本年度は,気泡塔内に懸濁させた脂質二分子膜小胞(リポソーム)の膜透過性が気液流動場において増大する現象をリポソーム系酸化酵素反応の制御に応用するために,下記の検討を行った。
(1)リポソームに複合化した酸化酵素反応系の調製と特性の評価
グルコース酸化酵素を内包して,カタラーゼが脂質膜外表面に固定化されたリポソームを調製した。さらに,D-アミノ酸酸化酵素を内包したリポソームを調製して,酵素活性の保存安定性とD-Alanine, D-Methionine, D-Serineの酸化活性を評価した。その結果,各アミノ酸の膜透過抵抗によりリポソーム系酸化速度が低下した。リポソーム系では,見かけの基質選択性がアミノ酸の脂質膜透過性に依存することが示唆された。一方,リポソーム内封入アミノ酸酸化酵素活性は保存時に著しく不安定であった。酵素分子のリポソーム膜への固定化と補酵素FADの添加により,酵素の多量体構造が安定化され,高活性を発現することを明らかにした。
(2)リポソーム膜透過性に及ぼすせん断流の影響
基質のモデル物質として蛍光色素を内包したリポソームを,温度制御されたコーン・プレート型粘度計内に懸濁した。本系を用いて,高温条件のせん断場では,懸濁リポソームの粒子径に依存して,脂質膜透過性が増大することを,蛍光色素の膜透過係数に基づき定量的に明らかにした。
(3)気液流動を活性制御因子とするリポソーム系酸化酵素反応操作
グルコース酸化酵素を内包したカタラーゼ固定化リポソームを外部循環式エアリフト型気泡塔に懸濁して,過酸化水素の分解を伴うグルコース酸化反応操作を行った。その結果,気液流動場では,グルコースの脂質膜透過が促進されて酸化反応速度が著しく増大した。また,リポソーム膜上のカタラーゼ活性は,懸濁リポソーム径が大きいと不安定となることを明らかにした。
以上のように,リポソーム系酸化酵素反応の速度と安定性を気泡塔内気液流動場で制御する触媒系を開発した。
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