研究概要 |
次世代航空宇宙推進用機関の1つとしてパルスデトネーションエンジン(Pulse Detonation Engine,PDE)が注目されている.実用化に向けた課題の1つにデトネーションの開始がある.この課題に対し,我々は『円錐形状反射板を用いたパルスデトネーションエンジン(PDE)イニシエータ』を提案している.昨年度までは反射体後方の円錐部まわりを伝播するデトネーション波の伝播・消炎のメカニズムを観察したが,本年度は反射体前方における円筒デトネーション波形成に必要なドライバーガス過供給量の知見を得るため,直径500mmの大口径円筒燃焼器を用いた実験を行った.円筒燃焼器にドライバーガス(水素酸素量論混合気)をプリデトネータから過供給し,ドライバーガス量(過供給半径)をパラメータにして,ターゲットガス領域に円筒デトネーション波を伝播させる検証を行った.結果,初期圧力が1atmでは最小過供給半径が75mmで水素空気量論混合気のターゲットガスにデトネーション波を伝播させることに成功した.ドライバーガスのみを充填して実験を行った場合,半径40mmの位置で,セルサイズの均一な安定円筒デトネーション波が形成されるが,ターゲットガスに対してドライバーガスを供給する場合,境界領域に厚さ約40~50mmの混合領域が形成されることが数値解析により判明した.以上の結果より,安定な円筒デトネーション波の形成に必要な位置(半径40mm)までターゲットガス領域を形成するためには,上記の混合領域を考慮してドライバーガスを充填する必要があることが分かった.混合が起こっていないドライバーガス領域で安定した円筒デトネーション波を形成させてからターゲットガスに入射させることで,流路幅に対して伝播可能なセルサイズを持つターゲットガスに円筒デトネーション波を伝播させることが出来る.
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