研究課題
宇宙輸送機用極低温燃料タンクへの炭素繊維複合材料(CFRP)の適用性評価を目的として、極低温環境でも優れた性能を発揮する高靭性エポキシを用いたCFRPに対し、極低温タンク固有の荷重である熱荷重(常温~極低温)を繰り返し与える実験を行うと共に、CFRPの損傷が発生しやすい面外衝撃荷重についても繰り返し衝撃試験を実施し、その際のCFRPの損傷挙動の把握とガス漏洩量を計測した。X線探傷や超音波探傷などによる非破壊検査により、熱荷重だけでは損傷が観察されず、ガス漏洩を引き起こすこともないことが判明したが、面外衝撃荷重により、CFRP中に層間剥離や繊維破断などが観察され、エネルギレベルや繰り返し数によっては致命的なガス漏洩が生じることがわかった。特に、面外衝撃荷重の場合は、内部に発生する層間剥離だけではガス漏洩は生じず、付与する衝撃エネルギレベルが高くなり、表裏層に繊維破断が生じると、致命的なガス漏洩が起こることをつきとめた。昨年度の繰り返し引張負荷下における結果もふまえ、総合的に判断すると、CFRPタンクが健全に製造されれば、高いエネルギレベルの面外衝撃に対し、対策は必要となる場合はあるが、ある程度の荷重や繰り返し数までは、安全性を保てることを示した。本研究により、CFRPの極低温燃料タンク構造へ適用する場合の損傷メカニズムに関する知見が得られたと同時に、極低温燃料タンクへのCFRPの適用性が高まったこと考えられ、宇宙輸送機の高性能化への有意義な知見が得られた。
すべて 2010
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Transactions of JSASS, Space Technology Japan
巻: Vol.8 ists27 ページ: Pc_5-Pc_9