研究概要 |
航空機構造部品等に用いられる金属材料の軽量化・高強度化のため,材料表面を改質するピーニング技術が疲労強度向上を目的として、広く用いられている。本研究では、高速水噴流中の気泡の崩壊時に生じる局所的な高衝撃力を利用したキャビテーションピーニング(Cavitation Peening, CP)を取り上げ、CP後の材料表面の特性評価と疲労特性との関係を明らかにすることを目的として、研究を遂行した。 1.圧子押込み試験を用い、CP処理を施した金属表面改質層の降伏応力を同定する手法を提案した。圧子押込み試験の弾塑性軸対称有限要素モデルを構築し、押込み試験中の荷重-変位曲線を適切に評価する方法について検討した。特にX線回折測定による残留応力評価結果を用いて逆問題解析を行う方法を検討し、引張試験結果と比較して妥当な降伏応力値が得られた。 2.SUS316Lを供試材として、未処理材とCP処理材とで降伏応力の変化を評価した結果、CP処理によって表面の降伏応力が300MPaから約500MPaに上昇していた。降伏応力変化は深さに依存し、表面から約50μmの厚さで顕著に降伏応力が上昇していた。また約500μmの深さまで降伏応力が上昇しており、CP処理によって改質されていることが分かった。 3.上記の未処理材とCP処理材に対して平面曲げ疲労試験を実施した結果,CP処理材の疲労寿命が向上しており、CP処理によって表面層の降伏応力の上昇が疲労特性向上を与えているという結論を得た。
|