研究概要 |
航空機構造部品等に用いられる金属材料の軽量化・高強度化のため,材料表面を改質するピーニング技術が疲労強度向上を目的として、広く用いられている。本研究では、高速水噴流中の気泡の崩壊時に生じる局所的な高衝撃力を利用したキャビテーションピーニング(Cavitation Peening, CP)を取り上げ、CP後の材料表面の特性と疲労特性との関係を明らかにすることを目的として、研究を遂行した。 1.予き裂を導入した疲労試験片を用いた疲労き裂伝播特性評価法について検討した。繰返し応力350MPaの疲労き裂進展試験において、未処理試験片では、疲労回数20,000回で5mmのき裂が発生しており、その後急速に疲労き裂が進展し、37,000回で破断に至った。一方、CP処理時間4s/mmおよび16s/mmの試験片では、それぞれ50,000回および66,000回で破断した。これにより、CP処理を施すことで疲労寿命の向上が実証された。 2.結合力モデルを用いた有限要素モデルにより、表面改質によって導入された機械的特性変化によるき裂進展への影響を解析した。解析においても圧縮残留応力の導入と降伏応力の上昇が同時に起きた場合でも、予き裂先端の応力集中が小さいために、き裂進展を抑制する傾向にあることがわかった。 3.非局所結晶塑性モデルを用いた有限要素解析により、局所的衝撃力の及ぼす範囲を表すショット径と結晶粒径との関係を明らかにした。ショット径が大きい場合は、深さ方向に対する著しい改質が可能であり、ショット径が比較的小さい場合、特に最表面の結晶粒内での加工硬化が大きくなることが明らかとなった。
|