パルスデトネーション燃焼では定容燃焼に近い燃焼状態が得られるため、高圧力化の困難な超小型ガスタービンの熱効率を大きく向上できる可能性がある。本研究の目的は世界最小サイズのパルスデトネーション燃焼器(燃焼室長さ20cm×高さ3cm×幅2cm、容積120cc、空気流量16g/s、圧力比3:1、NOx排出20ppm)を開発することである。本年度は燃焼器開発の基礎的知見となる燃料噴射とデトネーション燃焼過程について研究を行った。燃料噴射過程は間欠燃焼方式のパルスデトネーション燃焼において燃焼サイクルの繰り返し速度を律速する過程である。数msの速やかな予混合気形成に適する燃料噴射孔の配置を検討するためには予混合気濃度の時間変化や空間分布を把握することが重要である。そのため、アセトンをトレーサーとする平面LIF計測の利用を試み、計測用光学系を構築した。予備計測として小管を用いた予混合気噴流の濃度空間分布画像を取得し、光学系の空間解像度が燃焼器に適用可能であることを確認した。燃焼過程に関しては、燃焼器長さ200mm以内でデトネーションを開始するために乱流噴流火炎を生成する2本の点火器を燃焼器に装着し、デトネーション開始の可能な点火器の当量比や燃焼器内燃料噴射と着火とのタイミングを確立した。予混合気形成からデトネーション燃焼、燃焼ガス排気までの燃焼サイクルをシュリーレン可視化と燃焼器内圧力計測に基づいて検討し、40サイクル/秒までの燃焼繰り返し速度を達成した。このとき、予混合気形成に要する時間は6ms、燃焼過程は2msであり、排気時間がサイクル中で最遅の17msであったが、燃焼器流入空気流量を増加することで排気時間は短縮できることが分かった。燃焼器に用いるプロパンやブタン、灯油燃料の基礎的なデトネーション特性を調べるために0.3MPa・473Kまでの高圧高温予混合気を用いることのできる実験装置を構築した。
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