平成22年度では、1.マイクロ波放電低圧窒素プラズマの分光測定と、N_2B状態における実験的振動粒子数分布の算出および振動非平衡の検討、2.N_2B状態における理論的振動粒子数分布解析を行った。 1の実験的研究では、マイクロ波放電により発生させた低圧窒素プラズマを550~1060nmの可視~近赤外の波長範囲で分光測定し、測定波長範囲においてΔv=0~+4バンドシリーズのN_21+バンドを観測した。これにより得られた実験スペクトルを理論スペクトルと比較することにより振動温度と回転温度を推定し、プラズマは熱的非平衡状態にあることがわかった。また、各バンドのピーク強度からN_2B状態のv=0~12の実験的振動粒子数分布を求め、プラズマは高振動準位ほどボルツマン分布より相対的に粒子数が減少する振動非平衡状態にあることがわかった。 2の理論的研究では、N_2B状態に対するマスター方程式を構築し、振動粒子数分布解析を行った。マスター方程式には、重粒子間衝突による振動準位間遷移、解離、再結合、およびN_2B状態からN_2A状態への放射遷移を考慮し、速度係数には情報理論的手法により求められた式を用いた。本解析では、解離速度係数のパラメーターを調整することにより、理論的振動粒子数分布が実験的振動粒子数分布を良好に再現できることを示し、プラズマの振動非平衡について詳細に検討を行った。さらに、マスター方程式により得られる理論的振動粒子数分布を理論スペクトルに考慮することで、実験スペクトルをより精確に再現できるN_21+バンドの非平衡放射計算機コードの構築を行った。
|