研究概要 |
本年度は,マルチセルインフレータブル構造の大型化を試みると同時に,その基本気的な機械物性値の取得を行った.マルチセル構造を相似的に大きくすると,曲率半径が増し,結果として膜応力の増大につながる.これらの過度の膜応力の増大を防ぐため,セルサイズの最適化を図った.これらの設計に基づき,実際に大型パネル構造を製造した.更に,長期の宇宙環境による利用を見据え,ガスバリア性を向上させた多層フィルムを採用した.従来の単層フィルムでは,1日以内の真空環境下で,大幅なガスリークが観測されていた.一方で多層フィルムを採用した結果,1ヶ月間真空環境下においたパネル構造の曲げ剛性を評価において,ガスリークに依存すると考えられる曲げ剛性の有為な変化は確認されなかった.また,この大型パネル構造においては,パネル厚をセルの多段化によって増すことに成功し,曲げ剛性の向上につながっている.多段化おいては,層間の接着技術を向上が鍵となっており,2,4,8段の試作を行った.原理的には,これらの繰り返しにおいて,パネル厚を自由に増すことができる.最終的に開発された多段大型マルチセルパネルは,等価な曲げ剛性のアルミ板と比べて,面密度では1/5程度となっている. 最後に,さらなる応用展開として,弾性座屈を利用した収納可能なパネル構造へのマルチセルインフレータブル構造の利用を検討し,その概念設計を行った.要素試作を経て,一部機能実証を行ったが,これらの更なる構造最適化は今後の課題となった.
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