研究概要 |
船舶の機関システムは,複雑なプラントであるため,モジュール化設計によって入出力を絞り込み,標準化する設計手法が有効である.機関室の開発をモジュール単位に分割することによって,モジュール単位での設計改善や性能最適化・品質保証を可能とし,システム開発を「モジュールの組み合わせ」にすることができる.モジュールの分割位置は,モジュール単位で開発可能な品質や,各モジュールの実装密度,および各モジュールの入出力に影響を及ぼす.このため,モジュールの分割を決定する問題は重要問題であるが,論理的な設計法は現在提案されておらず,待望されている状況にある. そこで,モジュール単位での機能の独立性を高め,機関室設計の複雑性を低減するようなモジュールの分割手法を構築した.冷却系・潤滑系・燃料供給系などといった系統システムを,機能とフローの表現に基づくネットワークによって表現することで,機関室のモジュール分割問題を,ネットワーク群の切断問題として定式化した.この定式化に基づき,モジュール化のメリットを最大限に発揮することが可能な,最適なモジュール分割案を導けることを示している.特に,アップグレードの過程において,分解やメンテナンス,再組立という作業において必要な手順と工数を,論理的に導くことを可能とした。このアップグレードに必要な手順と工数の評価に基づいて,長期間にわたる多様なアップグレード可能性を製品設計に埋め込む手法を構築し,効果を検証した. また,機関効率の改善のために,プラントを構成するタービンや熱交換器などといった構成要素をテンプレート化し,テンプレートを組み合わせることで,プラントの構成を設計し,システムとしての能力を見積もる手法を構築した.提案する手法を,共同研究を通じて海洋温度差発電プラントの設計に適用することによって,確かに効率向上が可能であることを,定量的に確かめている.
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