AUV(自立航行型水中ロボット)が自らの判断の下に海中で充電をするための仕組み作りが本研究の最終ゴールである。本研究助成で実施している研究内容は水中で電力を非接触で安全に受け渡しするための基本的な機器とその構成について検討を行い、その安全性や効率の向上を目的としている。 相受電コイルはワイヤレスで電力を受け渡しするためのキーデバイスであり、それらの特性がそのままシステムとしての性能や効率に大きく影響する。平成21年度までの研究の結果、送電コイルおよび受電コイルの形状は一般にパンケーキ型コイルと呼ばれる形状の方が海流その他の外乱が多い海中環境では適していることがわかってきた。また、送電コイルと受電コイルの相対的位置関係のズレが大きくなると、送電効率が著しく低下するであろうことが予測された。 海中という極めて外乱の多い環境であることと、AUV自身の姿勢制御性能やその精度について考慮すると、送電コイルと受電コイルとの相対的位置関係のズレが生ずることは避けがたい。そこで平成22年度は、このズレによる影響を最小限に抑制する手法の検討を行った。検討した範囲としては、送電ステーション側に設置される高周波インバータの制御手法、各コイルの周辺の磁束密度分布、給電ステーションとAUVとのドッキングに関する検討、である。こられの検討の結果、現在最も採用が見込まれる東京海洋大学所属のAUVを対象として考慮すると、AUV側の構造材、各種計測機器の配置上の兼ね合いから、送電コイルが発生する磁束密度分布の解析を行い、いかに効率よく集中させるかを検討すべきと判断された。 電磁界解析シミュレーションの結果、送電コイルの直径を受電コイル直径よりも小さくし、かつ多段巻きとすることで、ズレ発生に伴う影響をある程度抑制できる可能性が示された。
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