海洋開発の分野において、長大弾性管は重要な役割を果たしている。長大弾性管は自身の直径に対し全長が非常に長く、弾性的な挙動を示す。長大弾性管が受ける様々な外力の中で、自身から剥離した渦による流体力は渦励振と呼ばれる振動現象を引き起こす。渦励振には高周波の振動成分が含まれており、疲労破壊の原因となりえる重要な現象である。近年、渦励振に関して多くの研究がなされているが、渦励振を考慮した長大弾性管の挙動を時系列で推定する研究は少ない。数種類の大きさの異なる力が、異なる順番で構造物に作用した場合、疲労の蓄積の様子は異なるといわれているため、長大弾性管の挙動を時系列で推定することが必要である。 長大弾性管の3次元的な運動を推定するためには、3次元の流場を再現する必要がある。本研究ではまず、渦励振が発生している円柱まわりの2次元流場の解析を行った。小型回流水槽内に3次元影響を抑制するためのエンドプレートを取り付けた剛体円柱模型を異なる支持方法で設置し、一様流を与えた。円柱に発生する渦励振の振幅や周期の計測と同時に、流場をPIVによって可視化した。円柱模型の支持方法は(1)固定、(2)流速に対して直角方向(y方向)のみ運動可能、(3)流速と並行方向(x方向)のみ運動可能、(4)x、y両方向に運動可能の4種類とした。実験では、実際の長大弾性管に発生しやすい振動現象である、自身の断面が"8"字型の軌跡を描く振動現象が確認できた。今回、円柱の振動振幅に制限があったため、バネ支持の方法の検討が必要である。 円柱まわりの流場の再現と発生する渦励振を推定するため、バネ・ダンパーを用いて円柱の運動をモデル化し、数値計算を行った。数値計算ではストローハル数や円柱の振幅など、実験値と比較して妥当性のある値を得ることができた。流速が大きい場合に、円柱模型の支持方法を適切にモデル化できていなかったため、運動のモデル化に改良の余地がある。
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