海洋開発の分野において、長大弾性管は重要な役割を果たしている。長大弾性管は自身の直径に対し全長が非常に長く、弾性的な挙動を示す。長大弾性管が受ける様々な外力の中で、自身から剥離した渦による流体力は渦励振と呼ばれる振動現象を引き起こす。渦励振には高周波の振動成分が含まれており、疲労破壊の原因となりえる重要な現象である。近年、渦励振に関して多くの研究がなされているが、渦励振を考慮した長大弾性管の挙動を時系列で推定する研究は少ない。数種類の大きさの異なる力が、異なる順番で構造物に作用した場合、疲労の蓄積の様子は異なるといわれているため、長大弾性管の挙動を時系列で推定することが必要である。 前年度に実施した、小型回流水槽内にて弾性支持された剛体円柱模型まわりの2次元流場のPIVによる可視化と剛体円柱模型の運動計測実験の手法を踏まえ、可視化用のレーザーを異なる2断面に照射し、円柱後方に生成され、剥離する渦の3次元性を計測する実験を行った。渦の3次元性は見られたものの、高速度カメラによる異なる2断面の計測精度が不十分であり、計測手法の改良が必要である。 数値計算に関しては、前年度のバネ・ダンパー系を用いて円柱の運動モデル化と円柱にかかる流体力はCFDを用いて算出する数値計算法の改良を行った。流体力の算出にCFDを用いた場合、多くの計算時間を必要とするため、解析対象の流場をメッシュ分割する必要のない渦法を用いた計算法の開発を行った。渦法を用いた場合でも、長大弾性管の弾性的特性をモデル化するためにバネ・ダンパー系を用いている。剛体円柱の振動振幅が大きくなった場合、PIVによる円柱周りの1断面の計測結果と計算結果では、後方に流出した渦の位置が異なった。モデルの更なる改良が必要ではあるが、渦の3次元性をモデル化するための基礎となるモデルを確立した。
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