本研究は船舶が小氷片密集水路を航行するときの抵抗を数値解析によって評価する手法を開発することを目的とする。研究代表者が開発してきた、船体周りの氷片運動の解析手法を進展させるための課題として、計算規模の拡大への対処、解析条件の確立、consolidated layerモデルの実装が挙げられる。これらの課題を克服することにより、船舶の小氷片密集水路航行時の抵抗を数値解析により評価可能にすることを目標とする。1.マルチコア並列計算技術を応用することにより、数10万個の氷片がある水路での解析を可能とする。2.適正な解析条件の系統的探求。3.剛体-ばねモデルの応用によるconsolidated layerのモデル化。 平成22年度は解析条件の検討およびconsolidated layerモデルの導入に取り組んだ。平成21年度に開発した氷片配置方法を用いて解析条件を系統的に探求し、氷片が不規則に配置されている場合には規則的な場合よりも抵抗がわずかに小さいこと、氷片の形状分布によって解析結果が大きく異なり、球形氷片が多い方が文献値等に近い結果を得ること、流れ場そのものの抵抗への影響は大きいが流れ場の解析精度の違いに起因する抵抗推定値の違いは小さいことを見いだした。また平成21年度に計算規模の拡大に取り組み13万個程度の氷片を配した解析を可能としたが、さらに大規模化する必要があることがわかった。consolidated layerモデルの導入にも取り組んだが、結氷時の付着力強度の適正値が不明のままであり調査する必要がある。
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