研究課題
大深度掘削において問題となるドリルパイプ強度については、船体動揺に伴う動的応力の推算が重要となる。種々の仮定のもとに長大なドリルストリングの縦振動解析を行い、動的応力を推算するが、実験による検証はスケールの問題より困難である。そこで、地球深部探査船「ちきゅう」船上に構築をした実海域データ取得装置より得られた実海域掘削データをもとに、実際にドリルパイプに作用している変動軸応力の推算を行った。また、船体より吊り下げられたドリルパイプへの船体動揺の伝搬抑制のために、ヒーブ・コンペンセータが設置されている。このコンペンセータを介して伝わった上下揺が変動軸応力を惹起するため、コンペンセータの実海域での性能の把握も合わせて行った。結果として、コンペンセータは高い伝搬抑制性能を持つことが確認された一方で、状況によっては、コンペンセータ作動の位相が見られ、それにより抑制が制限される場合もあった。また、変動軸応力は、推算値より小さいことが多いが、大きな応力が作用している場合も限定的ではあるが観察され、従来の検討が必ずしも安全とは言えない。これらの実海域データによる考察を踏まえて、ライザー掘削およびライザーレス掘削両方で現在計画されている大深度科学掘削におけるドリルパイプ強度検討を行った。この強度検討を踏まえて、ドリルパイプ購入および運用条件の策定などへと進める予定にしており、「ちきゅう」の実運用への大きな貢献が実現できた。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Proceedings of the ASME 30^<th> International Conference on Ocean, Offshore and Arctic Engineering (OMAE2011)
巻: (CD)