研究課題
本研究ではCO_2とともに微生物を油層内に圧入して採油増進を図るEOR (CO_2-Microbial EOR、CO_2-MEOR)のフィールドテストを目的としている。前年度は油層から産出する油層水から、CO_2が存在する環境下において活発に増殖して石油の一部を嫌気的に分解し、石油の粘度を初期粘度の約半分程度にまで低減させるPetrotoga属の微生物を分離することに成功した。当該年度においては、同微生物をCO_2-MEORに適用することを目的として、とりわけ同EORのフィールドテストを想定している中国・吉林油田の油層内環境(高温、高圧、多孔質内、油層微生物との共存、など)を考慮した各種培養実験を行ない、同微生物の同EORへの適用性を検討した。その結果、同微生物は高温(~80℃)、高塩濃度(~9%)、高圧(~6MPa)においても良好な増殖と石油成分の分解に伴う粘度低減機能を発揮し、吉林油田以外の石油についても同様の粘度低減効果が認められ、吉林油田のみならず多くの油田におけるCO_2-MEORに適用可能であることを明らかにした。また、同微生物による嫌気的石油成分分解のメカニズムについて検討するため、炭素数6~36の各飽和炭化水素成分やベンゼンやナフタレン等の各芳香族炭化水素成分を唯一の炭素源として加えた培地で同微生物を嫌気培養した結果、同微生物は炭素数30以上の飽和炭化水素についても分解性を示し、比較的重質な石油成分を分解してその粘度を低減させていることを明らかにした。一方、同微生物を用いたCO_2-MEORを実施するのに適した油層の条件について、吉林油田をはじめ、国内外の温度や塩濃度などの油層条件が異なる油田に棲息している微生物について遺伝子工学的手法を用いて調査した結果、とりわけ温度が70~80℃であって塩濃度が1%程度の油田においてPetrotoga属の微生物が比較的優勢種として検出されたことから、吉林油田を含め、同様な条件の油層への適用可能性が高いことを示した。
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Proc.of International Symposium on Earth Science and Technology 2010
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Proc.of Canadian Unconventional Resources & International Petroleum Conference
巻: (CD-ROM) ページ: SPE-137568
Proc.of Society of Petroleum Engineers (SPE) Annual Technical Conference and Exhibition
巻: (CD-ROM) ページ: 1SPE-34961