研究課題
CO_2を油層に圧入して採油増進を図るCO_2 Enhanced Oil Recovery (CO_2-EOR)においては、油層に圧入されたCO_2の掃攻効率を高めることが重要てある。本研究では、CO_2とともに微生物を油層に圧入し、微生物による高浸透率領域の閉塞や石油の低粘度化によりCO_2の掃攻効率を高めてさらなる採油増進を図るCO_2-Microbial EOR (CO_2-MEOR)を提案して、その研究を実施した。平成23年度の研究ては、過去2年間にわたる本研究によって油田から分離され、その最適な培養条件等を検討してきた、CO_2存在下において石油中の比較的重質なアルカン成分を選択的に分解して石油の粘度低下をもたらすPetrotoga sp.AR80を用いたフィールド試験を想定して、室内コア掃攻実験によるEOR効果の検討と、その数値シミュレーションのための数学モデルの構築とCO_2-MEORシミュレータの開発を行ない、これを用いた数値実験によりAR80を用いたCO_2-MEORの採油増進メカニズムを検討した。また、油層条件や微生物・CO_2の圧入条件を変化させ、CO_2-MEORにおけるAR80の適用可能油層条件や最適な実施条件を検討した。AR80を用いた室内コア掃攻実験によれば、同微生物の油層内への圧入・培養による残留油が分解され粘度が低下し、残留油の約6%が増回収されることが示された。Monodの式を用いたAR80の増殖モデルの数式化や、室内コア掃攻実験結果とのヒストリ・マッチングを経て構築されたCO_2-MEORシミュレータ上で、50m×50m×1mの水平二次元油層の対角ブロックに圧入井と生産井を設けた油層モデルを用いてAR80を用いたCO_2-MEORの数値実験を行ない、その採油増進メカニズムを検討した。水攻法を実施した後の油層に対してAR80とCO_2を1.0 Pore Volum (PV)圧入し、10日間坑井をシィットインして油層内培養を行なった後、後押し水を30PV圧入して増回収を行なった。その結果、AR80の油層内培養により低粘度化した油が後押し水の前面に集積し、これが生産井に到達することによって油が増産されるCO_2-MEORにおける増回収のメカニズムが明らかになった。圧入するCO_2の濃度を変化させて数値実験を行なった結果、AR80による増回収効果を引き出す最適なCO_2圧入量も明らかになった。また、油層温度や塩濃度によってAR80の増殖挙動が異なるため、AR80を用いたCO_2-MEORの適用可能油層条件として、温度50~65℃、塩濃度3%以下が最もEOR効果を得られる油層条件であることを明らかにした。以上の結果から、AR80を用いたCO_2-MEORはフィールドレベルでも効果をもたらす可能性が示された。
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Journal of MMIJ
巻: 128 ページ: 198-208
Petroleum Science and Technology
巻: (掲載決定)
Proc.of SPE Asia Pacific Oil and Gas Conference and Exhibition
巻: (CD-ROM) ページ: 145898-PP
巻: (CD-ROM) ページ: 145990-PP