今年度の研究では、製鋼スラグと腐植物質を用いた藻場再生技術における更なる鉄供給効果促進と未利用資源の有効利用に向けた基礎的知見を得ることを目的として、農村地域で得られる木質系バイオマスの堆肥化(腐植化)実験と得られた腐植物質と鉄(II)との錯形成能評価を行った。堆肥化実験は、青森県鯵ケ沢町で得られる広葉樹(アカシア)、針葉樹(カラマツ)、リンゴを原料として用い、1ヶ月ごとに腐植物質量変化を評価した。また比較として、草木系バイオマスとして稲わらの腐植化も行った。 その結果、時間が経過するにつれて非腐植物質分画が減少すると共に、腐植物質(フルボ酸・フミン酸)分画量が次第に増加していくことが確認された。また原料による差としては、針葉樹であるカラマツよりもアカシアやリンゴの方が腐植化は早く、また腐植物質量も多いことが示された。このことにより、鉄との錯形成を利用する藻場再生技術の腐植物質源として用いるためには、針葉樹は適さない可能性が示唆された。またこの要因を明らかにするために、鉄(II)との錯形成能評価を行った。フルボ酸、フミン酸のうち、精製したフミン酸を用いて評価した結果、定性的ではあるがバイオマス種類による錯形成能の違いを示唆する結果が得られた。 次年度の研究では、錯形成能の更なる検討(定量評価)と腐植物質の構造解析等を行う予定である。これらの項目の評価によって、腐植物質の鉄との錯形成能と構造的特徴との関係性が示され、鉄錯形成能に有利な構造特性が明らかになることが見込まれ、今年度の研究成果を合わせることによって本研究課題の目的を達成できるものと期待できる。
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