研究概要 |
未利用バイオマス資源(草木系バイオマス)から得られる堆肥の藻場再生技術への利用可能性に対する基礎的知見を得るために、本年度は腐植物質の鉄との錯形成能評価、構造解析、そして鉄溶出特性評価を行った。腐植物質の試料としては、アカシア、カラマツ、リンゴ、稲わらの4種類から作製した堆肥を用い、錯形成能評価と構造解析については堆肥から分画・精製したフミン酸についての検討を行った。 鉄との錯形成実験においては、条件錯形成定数と錯形成容量について、4試料(堆肥)間の評価とともに現在藻場再生技術に実際に使われているバーク堆肥(人工腐植物質)との違いについても検討・考察し、各試料の錯形成能に関するデータを得ることができた。構造解析については、元素分析(C,H,N,O,S,Ash)、平均分子量測定、官能基分析(全酸度滴定、FT-IR)、紫外可視分光スペクトル測定を行った。元素分析結果では、O/Cをはじめとして試料による特徴が見られたほか、官能基分析結果からは試料間の構造の違いが確認された。これらの構造的特徴が鉄との錯形成能に影響することが推察された。一方で鉄溶出実験においては、藻場再生技術への利用を視野に入れ、製鋼スラグと堆肥試料を混合し、4試料と人工腐植物質についてその溶出特性の違いを検討した。その結果、本研究で作製した堆肥試料と製鋼スラグの混合物でも、人工腐植物質と製鋼スラグとの混合物からの鉄溶出量に近い溶出量を示すものが見られ、藻場再生技術への利用可能性が示された。 このように本年度は、草木系バイオマスの藻場再生技術への有効利用に向けた有用な基礎データを得ることができ、昨年度の成果と合わせ、当初の研究目的に沿った成果を得ることができた。今後、実際の利用に向けて水槽やフィールドでの海藻生育試験を行うことで、本研究成果が更に活かされることが期待できる。
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