本研究では、希土類金属の分離・回収用の希土類金属吸収・放出材料の創出を目指し、比較的データの豊富な450℃の溶融LiCl-KCl中における基礎研究に取り組み、希土類金属Dy、Ndと基板金属Niとの合金の形成電位と成長速度から、Dy、Ndの分離・回収に適した電解条件を検討した結果、以下の成果を得た。 ・Ni電極を用いた定電位電解を行い、0.55V(vs.Li^+/Li)では密着性の良い緻密なDyNi_2とNdNi_2合金を作製することができた。また、450℃でのDyNi_2の成長速度は19.2μm h^<-1>、NdNi_2の成長速度は9.8μm h^<-1>であることが明らかになった。一方、一度作製した緻密なNdNi_2を、0.75VではNdNi_3、0.80VではNd_2Ni_7、1.00VではNdNi_5、1.80VではNiへ相変化させることができた。 ・Dy、Ndの分離・回収に適した電解条件を検討するために、溶融LiCl-KCl中にDyとNdイオンを0.50mol%添加した系において、Ni電極を用いて0.55~0.85Vで定電位電解を行い試料を作製した。得られた試料を酸溶解した後にICP測定し、各元素の析出量を算出した結果、試料中のDy/Ndの質量比は、0.65Vで最大値である約72を示し、適切な電位に保持すればDyを高い選択性で分離できることが示された。このことから、Ni電極を用いればDy、Ndイオンの混在する塩化物溶融塩中からDyのみを選択的に回収できることが明らかになり、希土類金属の相互分離の可能性も示された。
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