昨年度、廃GFRP層間材料の効果が見られたモードII層間疲労き裂進展について、さらにENF試験によって層間疲労き裂試験を行い、力学的な背景について調査した。負荷レベルが高い場合、UD層と廃GFRP破砕片層の層間を疲労き裂が進展したが、UD層とUD層の層間を疲労き裂が進展する場合と変わらないため、破砕片層の効果はない。しかし、負荷レベルを下げていくと、破砕片層の効果が表れた。プラスチックレプリカによる連続観察や破面観察からそのメカニズムを考察した結果、層間疲労き裂が破砕片層を横切る場合、破砕片層の架橋効果によって疲労き裂進展が遅延されることがわかった。また、破砕片層のき裂面には摩耗が生じており、き裂面の摩擦力の増加もき裂進展速度を低下させていると考えられる。さらに、UD層と破砕片層の層間を疲労き裂が進む場合も、破砕片層内でモードI疲労き裂が生じて、き裂が不連続となり、き裂進展速度を低下させることがわかった。以上の三つのメカニズムによって廃GFRP破砕片層はモードII疲労き裂速度を低下させる効果をもつ一方で、樹脂の未含浸領域があると破砕片層の有無に関係なく、疲労き裂進展速度が増加する場合も観察された。したがって、真空含浸法の改善も必要である。さらに負荷レベルを下げると、破砕片層を挿入した積層板では疲労き裂の停留現象が観察された。そのメカニズムは完全には解明できなかったが、破砕片層の架橋効果およびモードIき裂の発生によってモードII疲労き裂が停留したと考えられる。これらの効果は破砕片層のない通常の積層板にはないため、通常の積層板では停留現象はないと考えられる。本研究で行った疲労試験でも、通常の積層板には停留現象は観察されなかった。停留現象は破砕片挿入型積層板の大きなメリットであると考えられる。
|