東京大学のUTST装置では、真空容器外に設置されたポロイダル磁場コイルを用いて真空容器内に磁気中性点を2つ形成し、そこで発生した初期プラズマを合体させることで球状トカマクを立ち上げるという独創的な実験を行っている。この合体生成実験を成功させるには、2つの初期プラズマのポロイダル磁束をバランスさせることが重要である。初期プラズマを生成するための予備電離はワッシャーガンによって行われているが、上下2つの磁気中性点における予備電離を均一化するために、真空容器内部の底面に設置されているワッシャーガンに加えて新たに上方にも同様のワッシャーガンを設置した。ワッシャーガンによって生成された種プラズマはトロイダルコイルと平衡磁場コイルによる螺旋磁場によって上方に伝わるため、ワッシャーガンは真空容器内部の天井ではなく、上から1/3程度の位置の壁面に設置することが効率良いと分かった。これにより、センターソレノイド(CS)を用いた放電だけでなく、CSを全く使わない放電でも合体実験が可能となり、合体の様子は真空容器内部に挿入された290チャンネルの磁気プローブアレーによって詳細に観測された。この成功により、球状トカマクの課題であり世界で広く研究されているCS無し立ち上げについての1つの有用な方法を示すことができた。また、合体時に真空容器外に設置されたアクセラレーションコイルを使用することで合体速度を速め、リコネクションによる加熱を促進し、より良いパラメータのプラズマが得られることが分かった。
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