研究概要 |
核融合炉実現を目指した今後の磁場閉じ込めプラズマ研究において、核燃焼プラズマ中のアルファ粒子の動的挙動を解明する事が極めて重要な研究課題である。閉じ込められたアルファ粒子の計測法としては協同散乱が最も有望であるが、核燃焼実験で想定されるプラズマパラメータを考慮すると、協同散乱を誘起する為のプローブ電磁波の周波数としては、サブテラヘルツ帯が最適である。しかしながら、この周波数帯には今まで大電力電磁波源が存在していなかった為に、その重要性にも係わらず、高空間・時間分解能を持ったアルファ粒子計測手法は未だ確立されていない。本研究の目的はこうした現状を打破する為に、将来の核燃焼プラズマ実験において協同散乱計測を行う事を目指して、サブテラヘルツ帯の大電力ジャイロトロンを開発する事である。 これまで協同散乱を行うために、周波数100GHz近傍の加熱用ジャイロトロンや、28THzのCO2レーザーを光源とした開発が行われてきた。しかしながら、これらの周波数帯ではビームの屈折やカットオフが生じたり、散乱領域が微小角に限られてしまう為に空間分布計測が困難になる等の問題が生じる。サブテラヘルツ帯のジャイロトロンを開発し、協同散乱計測に適用する事で、これらの問題を全て克服することが可能となる。そこで、開発の第一段階として大型ヘリカル装置(LHD)への適用を目指し、周波数400GHz近傍で、100kWレベルの発振出力を得る為の共振器設計を行った。既存の電子銃特性を考慮して非線形計算を行い、規格化電流及び規格化相互作用長を最適化することで最適発振モードをいくつか選定した。その後更に、モード競合シミュレーションを行うことで最適モードを絞り込み、最終的にTE15,2モードを発振モードとして選定した。シミュレーションによると、このモードを用いる事で加速電圧65kV、ビーム電流10A、入射ビーム半径1.9mmの条件下で100kWの出力が得られる事を明らかにした。
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