研究課題
Be12Tiは核融合環境下で使用される材料であり、結晶内部に多量の水素が注入されることになる。しかし、実験的手法だけではBe12Ti中における水素の原子レベルの振る舞いに関する情報はほとんど得ることはできない。そこで、本年度は、第一原理電子状態計算法を用いてBe12Tiにおける水素存在状態についての第一原理計算を行った。使用した計算コードはSIESTAである。まず、完全結晶Be12Tiのスーパーセルを作成し,最適な格子パラメータの導出を試みた。Be12Tiは正方晶であり、格子定数はa=b=7.36Å、c=4.195Åであるが、理論計算を行うときにはその計算系で最適化された格子定数を使用する必要がある。c/a比の導出を行ったところ、c/a=1.14708Åとなった。この手順を繰り返すことで、最適な格子定数の導出を試みたが、結晶内のいくつかのBe原子に0.9eV/Å程度の力が作用していた。固体中の水素の挙動はこのような力の影響を強く受けることが予測されるため、格子定数及びc/a比を導出する際にスーパーセル内の原子配置も変化させ、最適な格子定数及びc/a比、原子配置を得た。次に、Be12Tiスーパーセル中における水素の固溶状態を調べるため、Be12Tiの格子間位置に水素を配置し、水素を含めた構造最適化及びエネルギー計算、分子軌道計算を行った。第一原理電子状態計算における構造最適化計算は「準安定状態」を探索する手法のため、原子の初期配置の影響を受ける場合がある。特に、本研究で用いたBe12Tiは非常に複雑な結晶構造を有するため、水素の初期配置の影響を受けやすい。そこで、Be12Tiにおける結晶構造の対称性を考慮し、ある領域内において20パターンの初期配置を設定し、それぞれについての計算を行った。その結果、4種類の準安定状態を発見し、いずれも正の値を示した。これは、Be12Tiは安定な水素化合物を形成しないということを意味している。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
Journal of Nuclear Materials
巻: Vol.417 ページ: 1115-1118
巻: Vol.417 ページ: 1147-1149
巻: Vol.417 ページ: 1022-1025