研究概要 |
核融合炉の燃料回収精製法として、高温型プロトン導電体の水素ポンプ機能を利用した、水素同位体の直接回収手法が提案されている。従来研究では、陰極側(水素抽出側)に不活性ガスを通気することで水素透過量の定量評価を行っている。しかし、核融合の燃料サイクルへの適用を鑑みると、高純度で水素同位体ガスを回収する必要がある。このためには、陰極側の不純物ガス成分を減らすことが重要であり、減圧条件下における水素抽出機構の解明が必要である。今年度は、1Pa以上の低真空条件下における水素ポンプ特性を評価するため、既設の水素ポンプ試験装置に真空制御機器を増設して水素抽出試験を実施した。評価システムは、流量制御器、真空排気装置、圧力制御システム、ガスバノスタット、LCRメータなどから構成される。評価試料として片閉じ型CaZr_<0.9>In_<0.1>O_<3-α>試料(340mmL,ID:12mm,0.75mmt)を選定し、試料両側に白金電極と取り付けて水素抽出評価を行った。陽極側は焼き付け法で、減圧側(陰極側)は無電解めっき法で電極を取り付けた。評価では、作動温度873Kから1073Kとし、水蒸気電解条件で一定の直流電流を通電しながら、陰極側圧力を数Paから大気圧(100kPa)まで変えて水素抽出を行った。その結果、陰極側の圧力を変えると、作動温度によらず、数kPa付近で電圧が最小値となることが確認された。次に、減圧時のバルク抵抗と分極を区別して評価するため、交流インピーダンス測定を実施したところ、バルク抵抗は圧力に依存しないが、ガス拡散が寄与する分極成分が数kPa付近でもっとも小さくなることが確認された。これは、電極内のガス拡散性が物質移動に影響を与えることを示唆している。次年度は、細孔径の異なる白金電極を用いて、電極内ガス拡散性の影響を評価するとともに、1Pa以下の高真空条件下における圧力依存性を評価するため、高真空に対応した水素抽出システムの構築を進める。
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