研究概要 |
核融合炉の燃料回収手法として、高温型プロトン導電体の水素ポンプ機能を利用した、水素同位体の直接回収手法が提案されている。従来の研究では、陰極側(水素抽出側)に不活性ガスを通気し水素をパージするとともに、水素濃度を分析することで透過量の定量評価を行っている。しかし、核融合炉燃料循環システムへの適用を鑑みると、水素同位体ガスを高純度で回収する必要がある。このためには、陰極側の木純物ガス成分を減らすことが重要であり、減圧条件下の水素ポンプにおける物質移動機構の解明が肝要である。昨年度までは1Pa以上の圧力条件で評価を進めたところ、電極細孔径の影響、100Pa以下でのガス拡散抵抗が増加することが明らかとなった。今年度は、1pa以下の高真空条件にも対応した水素抽出装置の設計製作を進めた。具体的には、(1).試料加熱のため、真空容器内に加熱ヒータ(カンタル線)を設置、(2).フランジ真空側に試料取り付け溝を加工し、O-ringシールによる試料設置/固定、(3).真空ゲージと自動バルブによる帰還制御法を用いた装置内圧力制御機構、を有する装置を製作した。模擬試料として片閉じ型アルミナ管を取り付け、真空リーク試験とヒータによる加熱試験を行った。質量分析計によるHeリーク試験では真空漏れは確認されず、10^<-5>Paに真空圧力を維持できた。加熱試験では、試料内部に設置した熱電対で温度測定制御を行い、873Kまで加熱できることを確認した。次に、評価試料として円盤型CaZr_<0.9>In_<0.1>O_<3-α>試料(Φ20mm,厚み:0.5,1mm)を選定し、アルミナ管(Φ20mm,長さ:120mm)の片側に高温用シール剤で取り付けて片閉じ試料とし、真空試験を行った。しかし、シール部よりリークが確認されたため、シール材の再塗布などを行ったが所定の真空圧力を得ることができなかった。真空リーク対策として、高温加熱部の接続箇所をなくすため、一体成形試料の製作を進めている。この試料で、高真空条件下の水素ポンプ特性評価を進める予定である。
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