製作手法および材料入手の容易さの観点から、当初H21年度に予定していた有機EL膜に替えて、無機EL膜をセラミック材料の電気特性分布の可視化に適用する試みを実施した。一般に無機EL発光膜は、透明電極-金属電極間に無機EL層及び電気絶縁用誘電体層を積層形成させ、400Hz・100V程度の交流電圧を印加することで発光させる。本課題の試みにおいては、絶縁用誘電体層を省き、さらに無機EL層を一般的な使用の半分程度の厚みで対象試料の表面に形成し、透明電極を置いた。金属基板上に無機EL層を形成して透明電極を置いた発光条件の試験では、印加電圧16V程度から発光を確認した。この無機EL層を ̄1x10^<-6>S/mおよび ̄1x10^<-2>S/mの異なる電気伝導度を示す2種類の焼結SiC板(10x10x1mm^3)の表面に形成して400Hz・20Vを印加した場合には、後者の試料のみに対して発光が確認され、対象試料の電気伝導度の違いが発光強度の違いとなって現れることを確認した。今回印加した電圧範囲では厚み数十μm程度のセラミック試料に対しては、絶縁破壊を起こさずに適用できると考えられる。発光強度は印加する電圧周波数とともに増強することを確かめており、無機EL層厚みの低減と合わせて、特性分布の可視化に必要な印加電圧の低減が期待できる。また、特性分布観察時のみに無機EL層と対象試料表面を均一に接触させて発光させ、観察後には無機EL層を取り除くことにより、試料表面への損傷や汚染を抑える方法について検討し、可能性のある手法を見出した。
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