国際熱核融合実験炉ITERでは燃料であるトリチウムの炉内残留量の上限が安全上の規制によって定められている。よってトリチウムの炉内での主な残留機構を解明することはトリチウム使用の許可に関わる重要でかつ緊急の課題である。トリチウム残留機構の一つに炉壁(炭素など)から発生する不純物がトリチヴムとともに炉壁の表面に堆積する機構がある。本研究ではダイバータから発生する炭素不純物量と水素残留量の関係を調べることを目的に、2008年に大型トカマク装置JT-60Uで行われた、13Cメタン入射実験の解析を進めている。この実験では炭素同位体13Cを含むメタンをダイバータから入射した。通常の炭素である。12Cとの違いから13Cを検出することによりダイバータ以外の場所から発生した炭素不純物と区別することが可能である。昨年度にJT-60Uの容器内からとりだした約1000枚のタイルの分析をすすめ、13Cの堆積分布の解析を進めているが、分析装置の改良、保守などに時間を要し、成果には至っていない。一方、メタンのプラズマ中での解離・電離および発光過程のモデリングをすすめ、モデリングに必要なデータを最新のものに置き換えることにより、CHスペクトラルバンドの発光率の実験による測定値を再現する成果を得た。このモデリングを不純物輸送コードと統合し、メタンのプラズマ中での輸送過程を分光測定の結果とあわせて解析してゆく予定である。
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