本研究の最終目標は、ナノテクへの応用が切望されているガスイオンナノビームの普及に不可欠な装置の小型化を実現すべく、加速レンズ系内に減速レンズを挿入することによってビーム径の縮小化に有効である収差を制御する技術を開発することである。 研究実施計画に基づいてて最終年度にあたる平成23年度は、新たな加速レンズ実験体系の構築を前年度に引き続き行い、特に前年度に判明した電圧印加における様々な不安定性を解決すべく周辺環境の放電対策を進めた。その結果、レンズ系全体に対して150kV以上印加すると、加速レンズ装置と周辺の間の絶縁破壊やコロナ放電、周辺物品のチャージアップや高圧電場による計測機器へのノイズ混入など、ビーム形成及びその計測における不安定性が複数生じることがわかった。そこで、例えば装置周辺のチャージアップに起因するノイズ電場から電流測定用端子をシールドする等、不安定性の原因を一つ一つ特定して解消したことによって、200kVでのビーム電流計測が可能になり、ビーム電流10pA程度、ビーム径20μm程度への集束に成功した。研究実施計画では、収差制御の有効範囲であるビーム径サプミクロンまでの集束を行うことになっていたが、そのためには今後さらに加速レンズ系内のコンディショニング(クリーニング)を継続しながらビーム形成及びビーム径計測の安定性を高める必要があることがわかった。しかしながら、現段階において減速レンズ部には最大で40kV程度を安定に負印加できることを確認しており、前年度までにイオン光学シミュレーションによって得られた収差制御によるビーム径縮小化の最適条件である減速電圧12kVを負印加することは十分に可能であると結論付けられる。 以上、3年間の研究目標であった減速レンズによる収差制御技術をほぼ確立した。
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