本研究の目的は、パルス中性子の特性を生かし、共鳴吸収に着目して、二次元的に材料分析を行う共鳴吸収透過分析法の確立である。H21年度には、本研究に最適な二次元検出器として、京都大学谷森Grで開発しているμPIC(Micro Projection Ion Chamber)検出器システムの導入すすめた。一部の機器の入手が困難になるなど、整備に時間がかかったが、導入後、京都大学にて、γ線源によるμPIC検出器システムの動作確認を行い、不具合なく稼動すること確認した。また、これとは別に、J-PARCのNOBORUビームラインにて、0次元Liガラスシンチレータによる単体試料を用いたテスト実験を行い、共鳴吸収ベースデータを蓄積した。H22年度には、同ラインにて、まず、パルス中性子を用いたμPIC検出器の動作確認特性把握や二次元飛行時間測定実験を行い、パルス中性子による透過実験への適用性を確認した。その後、同ラインにて、2回ほど、単体や複合材の共鳴試料を用いて、透過実験を行った。そして、これまで蓄積したデータを利用して、解析を試みたところ、単体試料による測定から、評価済み核データによる予測値と比較して、1%程度の精度で定量化できることを確認した。一方、バックグランド成分が定量化への悪影響をあたえることも確認した。この成分は、シミュレーションから、バックグランドは、実験室中の散乱成分であることを確認した。材料解析のための基本的なアルゴリズムは確立できたが、バッググランド成分の除去など、より精度の高い定量測定には、まだ、検出器システムの改良や測定方法の改良が必要であることがわかった。なお、H21年度におけるJ-PARCのトラブル停止やH22年度末の東日本大震災により、マシンタイムが減少してしまったのは、非常に残念である。本研究で得られた知見は、J-PARCにて建設が予定されているイメージングビームラインへと活用されるだろう。
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