本研究の目的は、パルス中性子の特性を生かし、共鳴吸収に着目して、二次元的に材料分析を行う共鳴吸収透過分析法の確立であった。研究初期に始めた検出器システムの整備として、京都大学で開発しているμPIC(Micro Projection Ion Chamber)検出器システムの導入した。中性子を使ったテスト実験の結果、この検出器は、時間分解能(~1μs)、空間分解能(~0.5mm)、中性子/γ線感度(<10^<-6>)の点から、本研究に最適な二次元検出器であることがわかった。この検出器を用いて、J-PARCセンターのNOBORUビームラインにて行ったパルス中性子により、共鳴吸収透過実験を行った。試料としては、Co、Ta、Moなど、共鳴吸収ピークをもつ単体材料を利用し、厚さを変えながら、定量性を確認した。その結果、補正なしに、核データをベースに得られる情報から導出される物質の厚さは、実際の厚さと比較して、約7%の差があることがわかった。一方、バックグランド成分が定量化の精度に影響をあたえることも確認し、この成分は、シミュレーションや実験から、バックグランドは、実験室中の散乱成分であることを確認した。材料解析のための基本的なアルゴリズムは確立でき、二次元的に共鳴吸収透過分析が可能であることを示した。しかし、より精度の高い定量測定には、まだ、検出器システムの改良や測定方法の改良が必要であることがわかった。
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