本研究は、イオンマイクロビームを用いて微量元素の二次元的な動態を解析する大気マイクロPIXE(Particle Induced X-ray Emission)分析と、STIM (Scanning Transmission Ion Microscopy)及び二次元像から画像再構成によって三次元像を横築するCT(ComputedTomograph)技術を組み合わせて、医療分野における診断に有効な分析技術に発展させ、微小(100μm以下)な試料中の三次元微量元素分布測定法の空間分解能の向上と測定時間の短縮を図り、アスベスト肺などの診断へ応用することを目的としている。この方法では、従来、1つの試料の測定に10時間以上かかっており、これが医療分野への応用の妨げとなっている。この問題を解決するためには、測定に用いられるビームの強度が全く異なるために困難であったマイクロPIXEとSTIMの同時測定を実現する必要がある。そこで、本年度は、同時測定を行うための、円形のOn-off STIM検出器を設計・製作するとともに、その信号処理のための回路を製作し、十分な性能を有することを確認した。また、STIMのデータからマイクロPIXEの二次元データを補正し三次元像を再構築する計算コードの改良、試料ステージの回転精の向上を行い、その結果、本方式による三次元微量元素測定において、10μm以下の空間分解能を達成する見通しが得られた。この成果は、第26回PIXEシンポシウムにおいて発表された。
|